Poèmes choisis



    最後の詩         ロベール デスノス
                
ぼくはつよくお前のことを夢み、
おどろくほどたくさん歩き話し
まことお前の影を愛した
だからお前のなにも残ってはいない
影たちのなかの影になるしかなく
百回もある影よりもさらに薄影の身になるしかなく
お前の陽に輝く生を訪れ再訪する
射影の姿に成り果てた 


『デスノス詩集』 堀口大學訳 弥生書房 1978




  
  Le dernier poème  Robert Desnos


J'ai rêvé tellement fort de toi,                              
J'ai tellement marché, tellement parlé,
Tellement aimé ton ombre,
Qu'il ne me reste plus rien de toi,
Il me reste d'être l'ombre parmi les ombres
D'être  cent fois plus ombre que l'ombre
D'être l'ombre qui viendra et reviendra
dans ta vie ensoleillée.


Œuvres /Robert Desnos』 Paris : Gallimard, 1999



                 
Robert Desnos : 1900-1945   ロベール デスノス
シュルレアリストの一員として、夢や催眠術に強い関心を示し、潜在意識の世界を自動記述の手法で深く探求したが、そこに自ずと込められている鮮烈な叙情性は読者を魅了した。
   その後、超現実派を離れ伝統的な詩型に前衛的な主題を盛る詩風に変わる。
   第二次大戦中、フランスでのレジスタンス運動に加わったことにより、ナチスに捕えられ、
   チェコスロバキアの収容所で没した。











 幸せな愛はない  ルイ・アラゴン
   

人間には、確かなものは
何もない 力強さも
弱さも その心さえ
両手を広げたと思えば
その影は十字架を作る
幸せを抱きしめたと思えば
押しつぶしてしまっている
人生はおかしなもの
そして悲しみの別離
幸せな愛はない



人生なんて
別の運命に
向かわされた
武器も持たない兵士のよう
朝起きる事が
何の役に立とう
夜には不安気に
落ち着かぬ
「愛しの人」と言ってごらん
そして涙をおふき
幸せな愛はない

私の美しき恋、愛しい恋
そして私の恋の傷
私の心におまえは残る
傷付いた小鳥のように
私の唄った詩を
口にしながら
人々は何も知らずに
私たちとすれ違い行き交うけれど
もうそんな詩も
おまえの大きな月の為に死んでしまった
幸せな愛はない

生きることを学ぶなんて
もう遅すぎる
ふたりの心は
夜に泣く
身震いするにも悔恨が必要か
どんな歌にも
不幸が必要か
ギターの音にも
むせび泣きが必要か
幸せな愛はない

苦しみをともなわぬ愛はない
痛手のもとにならぬ愛はない
打ちのめすことのない愛はない
そしてお前への愛も 祖国への愛も
涙で養われないような愛はない
幸せな愛はない
しかし、それがぼくたちふたりの愛なのだ


『フランスの起床ラッパ』 ルイ アラゴン /大島博光 新日本出版社 1980

  

Il n'y a pas d'amour heureux    Louis Aragon
   

                    
Rien n'est jamais acquis
A l'homme ni sa force,
Ni sa faiblesse ni son coeur
Et quand il croit ouvrir ses bras
Son ombre est celle d'une croix
Et quand il veut serrer
Son bonheur il le broie
Sa vie est un étrange
Et douloureux divorce
Il n'y a pas d'amour heureux
.
Sa vie elle ressemble
A ces soldats sans armes
Qu'on avait habillés
Pour un autre destin
A quoi peut leur servir
De se lever matin
Eux qu'on retrouve au soir
Désarmés, incertains
Dites ces mots "ma vie"
Et retenez vos larmes
Il n'y a pas d'amour heureux.

Mon bel amour,mon cher amour
Ma déchirure
Je te porte dans moi
Comme un oiseau blessé
Et ceux-là sans savoir
Nous regardent passer
Répétant après moi
Ces mots que j'ai dressés
Et qui pour tes grands yeux
Tout aussitôt moururent
Il n'y a pas d'amour heureux

Le temps d'apprendre à vivre
Il est déjà trop tard
Que pleurent dans la nuit
Nos coeur à l'unisson
Ce qu'il faut de malheur
Pour la moindre chanson
Ce qu’il faut de regrets
pour payer  un frisson
Ce qu'il faut de sanglots
Pour un air de guitare
Il n'y a pas d'amour heureux
Il n'y a pas d'amour qui ne soit à douleur
Il n'y a pas d'amour dont on ne soit meurtri
Il n'y a pas d'amour dont on ne soit flétri
Et pas plus que toi l’amour de la patrie
Il n'y a pas d'amour qui ne vive de pleurs

Il n'y a pas d'amour heureux
Mais c’est notre amour à tous deux

La Diane francaise par Aragon』 Paris : Editions Pierre Seghers, 1945




Louis Aragon : 1897-1982    ルイ アラゴン
ダダイズムやシュルレアリズム運動に参加し、詩、散文を発表。
やがて共産党に入り、人民戦線で活躍。
第二次世界大戦下においては、誰よりも激しくレジスタンス運動を展開し
祖国愛と妻への愛を溶融し強化した<抵抗文学>を開化。

 
   フランス軍が崩壊したとき書かれたこの「幸せな愛はない」という詩
   「共同の不幸の中での幸福はありえない、というのが、当時この詩でうたわれた主題。」   
    とアラゴンは語っている。







  ソネット 8番    ルイーズ・ラベ

わたしは生き、かつ死に、火と燃え、水に溺れる、
冷たさに耐えながら、灼熱に身を焦がす、
生はこの身にあまりに優しく、あまりにつれない、
歓喜の混じる深い憂いにひたされているわたし。

笑うかと思えばそばから涙に暮れ、
快楽のうちにあってなお、多くの不満苦悩に耐えている、
幸福は素早く立ち去り、しかも永遠に続いている、
枯れ乾きつつ、たちまち縁に萌えもするわたし。

このように愛の神は定めなくわたしを曳きまわす、
いやますます苦しみに苛まれるかと思えば、
知らずして苦痛の外に逃れ出ている。

そして、わが歓びが確実と信じ、
待ち望んだ幸福の絶頂に立ったと思うそのときに、
愛の神はわたしをふたたび初めの不幸に突き戻す。


『フランス名詩選』渋沢孝輔訳 岩波書店 1998



    Sonnets Ⅷ   Louise Labé

Je vis, je meurs : je me brule et me noie ;
J’ai chaud extrême en endurant froidure ;
La vie m’est et trop molle et trop dure ;
J’ai grands ennuis entremêlés de joie.

Tout à un coup je ris et je larmoie,
Et en plaisir maint grief tourment j’endure ;
Mon bien s’en va, et à jamais il dure ;
Tout en un coup je seche et je verdoie.

Ainsi Amour inconstamment me mêne ;
Et, quand je pense avoir plus de douleur,
Sans y penser je me trouve hors de peine.

Puis, quand je crois ma joie être certaine
Et être en haut de mon désiré heur,
Il me remet en mon premier malheur.



Œuvres』 Paris : Gallimard, 1983




Louise Labé : 1524-1566   ルイーズ ラベ
リヨン派の代表的女性詩人。
美貌と才知と富に恵まれ、文人や学者を集め、自邸に文学サロンを開く。
実生活も作品もきわめて情熱的で、しかも大胆奔放であった。
作品の数こそ多くないが、フランス文学史上屈指の女流詩人とみなされている。
    












鎮静剤 
マリー・ローランサン

退屈な女より もっと哀れなのは 悲しい女です。
悲しい女より もっと哀れなのは 不幸な女です。
不幸な女より もっと哀れなのは 病気の女です。
病気の女より もっと哀れなのは 捨てられた女です。
捨てられた女より もっと哀れなのは よるべない女です。
よるべない女より もっと哀れなのは 追われた女です。
追われた女より もっと哀れなのは 死んだ女です。
死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です


『マリー ローランサン詩文集』マリー ローランサン/大島辰雄 六興出版 1977


Le calmant   Marie Laurencin

Plus qu'ennuyée Triste.
Plus que triste Malheureuse.
Plus que malheureuse Souffrante.
Plus que souffrante Abandonnée.
Plus qu'abandonnée Seule au monde.
Plus que seule au monde Exilée.
Plus qu'exilée Morte.
Plus que morte Oubliée.

Le carnet des nuits』 P. Cailler, 1956



Marie Laurencin : 1883-1956  マリー ローランサン
画家、彫刻家

19歳の時、ピカソと共にキュビスムを創始した芸術家、ジョルジュ・ブラックと出会い、モンマルトルのピカソのアトリエに出入りするようになる。そこで詩人アポリネールと出会い、運命的な恋に落ちる。
そして一つの事件が起こったのをきっかけに、アポリネールとの6年間の恋に終止符が打たれる。
1911
822日ルーブル美術館から名画「モナ・リザ」が盗まれるという事件が起こり、その捜査が行われていた中で、アポリネールの秘書のピエレが、ルーブル美術館から彫像を盗み出して、アパートに隠していたということが発覚した。アポリネールは共犯を疑われたが、無実は証明された。
しかしそれがもとで、嫉妬深くなったアポリネールに、ローランサンはついてゆけなくなり、翌年、苦しみながらも彼の元を去ることになる。

けれど2人の文通は別れた後も続く。
別れから5年の月日が経ち、ローランサンは結婚し、アポリネールも結婚をする。しかしその年のうちに、アポリネールはスペイン風邪のため死去。
出会いから11年、アポリネールは38歳の若さであった。

アポリネールの死から38年後、ローランサンはパリで、心臓発作のため、亡くなる。

アポリネールからの手紙を胸の上に置いて・・・。